震える舌

1980年、日本映画、松竹映画配給

幼い女の子が、虫捕り網で虫を捕まえるシーンから始まります。舞う蝶、追いかける少女。そして、河原で石で遊ぶシーン。ふとしたことで、指に傷を負ってしまい、中指の先から、血が流れます。その手は泥だらけ・・・・・・。

そして、流れるチェロをバッグに、オープニング・クレジット。

原作、三木卓。監督、野村芳太郎。

主演、渡瀬恒彦。出演、十朱幸代、若命真裕子・・・・・・

少女の名前は、三好昌子。川でアメリカザリガニを捕まえました。バックには高度経済成長期のシンボルのような高層団地。昌子の家もその団地にあります。

自宅での食事風景。昌子はフォークを思わず落としてしまいます。父親昭の渡瀬恒彦が若~い!オーバーオールのジーンズ姿。惚れる❤。母親邦江役に十朱幸代さん。両親は、娘昌子が風邪気味だと思い込んでいます。

トイレから出てきた昌子は、歩き方が変です。つま先で歩いています。そして、布団に戻るとすぐに倒れ込みます。どうも様子が変です。

夜、眠っている昌子が突然、叫び出します。口が真っ赤に・・・・・・。コワい。どうやら、自分で舌を噛んでいるようです。アカン、泣きそう。そして、救急車で運ばれます。しかし、病院では大きな病院で診てもらうように指示を受けるだけです。

しかし、翌日、大学病院での診察結果は、躾によるストレスが原因だ、と・・・・・・。翌日も検査を受けます。このときのお医者さんが宇野重吉さん。彼は、この症状が単なるストレスが原因ではないと診断し、すぐに入院の手続きが行われます。

そして、精密検査による診断結果は、『破傷風』。死亡率が非常に高い病気。愕然とする昭。原因は、川遊びでの指の傷。病室の窓には暗幕が掛けられなど、すべての刺激からシャットアウト。そんな重病者を小児病棟に置くなよ。子供ら、大騒ぎしてますがな。

医療ドラマなのですが、音楽がおどろおどろしくて、ホラー風。おまけに、両親も傷を負い、パンデミック・ホラーのような呈をなしてきます。そして、また発作。舌を噛んで血を吹く昌子。コワいって! 

やっと入院二日目。長~い一日の描写でした。もう観ていてツラいのなんの。子どもの苦しむ姿は、アカンって。もう、痙攣のシーンなんて『エクソシスト』の状態。たった一日で、母邦江は崩壊しそう。

医者も大変そうだぁ。中野良子がいいですねぇ。そういえば、最近見ないですね、この女優さん。一時は、角川映画の定番女優でしたが・・・・・・。

その中野美良子演じる主治医能瀬先生のひと言・・・・・・「悪くなりました」。怒りとも、悲しみともとれる両親の表情・・・・・・役者がいいとドラマが生きますねぇ。

そして、三日目を迎えます。朝から発作を起こす昌子。休憩所でタバコをもみ消す医者たち、時代ですねぇ。因みに待合室も、タバコスパスパ。

応急処置で、前歯を抜く医師。イタい、イタい。コワい、コワい。かわいそう・・・・・・。昌子ちゃん、もう顔じゅう血だらけだし・・・・・・。観てられない。

精根尽きて病室を出てくる昭。友人の山岸(蟹江敬三)に漏らす「ダメらしい、死にそうだよ、昌子」と弱音。新生児の部屋を眺めながら、固まる邦江。邦江ももう限界・・・・・・。

昌子の病状は悪くなる一方。ベッドに縛り付けられ、呼吸器を付けられた姿は、痛々しくて観ていて涙が出てきます。そして、医者にキレる邦江。「もうダメなんでしょ?」「生まなきゃ良かった」「あなたと一緒にならなければよかった」と、愚痴り始めます。

昭がトイレにオムツを捨てにいくときのシーンの音楽・・・・・・なぜ、こんなの? という不気味な音楽が流れます。なんかここは演出違うだろ、って。まんまホラー映画じゃね?

そして、また発作が起きたとき、邦江自身が発狂したように、医者を拒みます。十朱幸代さんの迫真の演技です。こんなん劇場で観ていたら、チビリそうです。

やっと四日目。祖母役の北林谷栄さんの演技が泣かせてくれます。ホント、上手いんですよねぇ。さらに、昌子自身、家族、医者達の苦闘が続きます。そして、心電図の反応が止まり、心臓マッサージを続ける能瀬医師。

固まる両親。そして、ここで穏やかな音楽が流れ・・・・・・これは昌子の苦しみが終わったことを示す音楽なのか? 不安が過ぎります。ところが、心電図に反応が! 

次のシーンでは、医師や看護師がぞろぞろと部屋を出て行きます。いったい、どうなった? 上手い演出ですね。

病室での昭と邦江。昭が言います。「昌子は死ぬ」「家に帰って片付けをしろ」「そして、俺も指をやられているから発病する」・・・・・・昌子ちゃん、助からないってことなの? で、医師たちは諦めて病室を出ていったの?

ハサミを手にとる邦江。驚く昭。なにする? 邦江は昌子の髪の毛を切り、握りしめます。もう、耐えられません。

邦江は精神が崩壊してしまったかの様子。自分も感染したと昭に告げ、自分と昌子の髪の毛の束を昭に託すのです。しかし、医者は二人は感染はしていないと診断します。

朝方、病室の風でカーテンがめくれ、陽の光が昌子を直撃します。また発作を起こしてしまう昌子。邦江は恐怖で足がすくんでしまい家から出ることができなくなってしまいます。もう、両親ともボロボロです。数日ぶりに外に出る昭。陽の光で思わず眩みます。そして、久しぶりの自宅。

二週間後、昌子の病状が良くなります。きけなかった口がきけるようになり、もう大丈夫そうです。泣き崩れる両親。無事に病状は回復したようです。しかし、音に対する恐怖はトラウマのように残っています。

しかし、やがて大部屋の中でも寝られるようになり、無事、破傷風の苦しみからも抜け出せたようです。一応は、ハッピーエンドでした。

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