映画『OLD』斜め視 SAW-SEKI著

ナイトシャラマン監督
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出典:https://screenonline.jp/_ct/17459277

★OLD映画感

日本にもファン、いや信者の多いナイト・シャラマン監督の新作『OLD』を観賞してまいりました。

シャラマン監督と言えば、『シックス・センス』で、衝撃デビュー。日本では、まるで元巨人の駒田選手の初打席満塁ホームランのようなイメージがついておりますね。そう、デビューが衝撃的過ぎた監督です。

この作品のおかげで、『どんでん返し監督』のイメージを植え付けられ、世に出る作品すべてにおいて、「次回作はどんなどんでん返しだ?」と期待を込められてしまった監督でもあります。

それ故、大きなプレッシャーもあったと思います。『シックス・センス』の次作『アンブレイカブル』でも、ブルース・ウィルスをいう超大物俳優を起用するも、期待したほどのどんでん返しではなかったことに観客は肩を落とします。ところが、この作品は、後の『スプリット』、『ミスター・ガラス』の三部作となる序盤だったという、二十年近く経ての企画自体が超スケールの大きなどんでん返しだったというオチがありました。

そんなシャラマン監督の新作ということで早速観賞!

本編が始まる前に、冒頭からシャラマン監督のコメントから始まります。コロナ禍で世界中の映画館が閉館され、やっと劇場公開できる喜びと観客に対しての感謝の言葉・・・思わず涙が出ます。この人は本当に映画が好きなんだなぁ、という熱意が伝わります。

しかし、ちょっと斜めに見てしまう筆者は、ここで思ったのです。この冒頭のシャラマン監督のコメント・シーンは、DVD版ではどうなるのだろう? また、ネット配信されたときは? などと・・・・・・。しかし、観賞中にこんなことを気に掛けるのは世界中で自分一人なのではないだろうか?

さて、本編ですが、やはり「どんでん返し」を期待されている方が多いかと思いますが、本作は原作を読んだ人のみ「どんでん返し」を味わえるという特殊な作品となっております。

原作未読の方にとっては面白くないのか? というと決してそうではありません。ただし、未読の方には「どんでん返し」を味わうことができないだけです。どのようなことかと言いますと、シャラマン監督が原作にアフター・ストーリーを付け加えたのです。

どちらと言うと、『シックス・センス』的結末を期待するより、同監督の『ハプニング』を意識した方がいいかと思います。

原作はフレデリック・ペータースとピエール・オスカル・レヴィーの『砂の城』という小説。オリジナル原案を映画化するシャラマン監督にとっては珍しく他人の原作を映画化したものなのです。

では、原作未読者は何を求めて観賞に臨むべきか? それは「原因」を求める作品ではなく、「理由」求める作品であるということです。この作品を鑑賞後に感じたのは『テネット』に通じるものがあるということです。

そう、世を騒がせたクリストファー・ノーラン監督のあの『テネット』です。『テネット』を鑑賞したとき、劇中に出てくる現象の原因など度外視でした。重要なのは、なぜ「名も無き男」が選ばれたかたが焦点でしたよね。

同じなのです。この『OLD』では、なぜこの家族たちがあのビーチに招かれたのか? という「理由」がキーなのです。まだこの作品を未鑑賞であれば、鑑賞しながら「理由」を探してください。ちなみにヒントはすべてホテルでの朝食シーンに凝縮されています。

それが分かったとき、「うわっ! やっぱ、この監督スゴ!」となります。

さて、キャスティングですが、トップ・キャストはガイ役のガエル・ガルシアです。ビーチに招待されるお父さんなのですが、残念ながらメイン・キャストにとしては薄い・・・という印象。

個人的には、息子トレントの青年時代を演じたアレックス・ウルフがトップ・キャストではないか感じました。

皮肉なことに、彼アレックス・ウルフは、『ヘレディタリー/継承』では、妹役の子役ミリー・シャピロと母親役のトニー・コレットに喰われてしまい、「お前主役だったの?」とツッコみたくなってしまいましたが、本作では、真逆でした。役者としての風格が出てきたということでしょうか。

そして、個人的には、ケン・レオンが出演していたことが嬉しかったですね。久しぶりにお会いできた印象でした。『SAW』、『LOST』では、お世話になりました。

また、自身の作品には必ず出演するというシャラマン監督ですが、本作ではとても重要な役で、出演時間もかなりありますので、「ちょっとアナタ出過ぎ・・・」とツッコみしてしまうことになるでしょう。

そして、ロケーションですが、もともとあるビーチの絶壁に高さ10メートル、幅270メートルの壁を加え、さらにデジタル処理で壁を施したという絶景。こうして、オープンなビーチであるはずなのに、抜け出すことができない・・・外界の密室という恐怖の空間を創り上げました。これはもう圧巻です。

さて、総評です。ストーリー、キャスティング、ロケーションなど、観る価値ありの作品ですが、再鑑賞はありません。『シックス・センス』のときのような「もう一度観たい!」とはならないでしょう。本作は、一回勝負の作品です。よって、ひとつひとつのセリフ、演技、シーンに集中して観ることをオススメします。なかなか集中力のいる作品です。

ただし、シャラマン監督の冒頭コメントが収録されているかどうかが気になるので、DVDは購入してしまうかも知れません。また、シャラマン監督作のDVDは、おまけ収録が多いからついつい購入してしまうんですよね。

★OLD評価点

点数付けしてみましょうか!

映画感的点数

OLD

絶壁の密閉空間を表現したCG

安定のどんでん返し

独特の恐怖感

2

ストーリー性

6

どんでん返し感

2

キャスト

3

総合評価

30分で1年分老いていくという誰も経験の役をこなした出演者の皆さんの演技は観ている観客をも戸惑わせました。

というのも、子どもたちは急激に変化する割に、大人たちの変化が乏しく、演出、メイクの呈もあるでしょうが、「子どもたちより老化速度が遅くない?」という、素直な印象です。

特に主演を任されたはずの夫婦の二人は、一晩で老衰を迎え亡くなるのですが、あまりに若々しい。演技、セリフはそれなりなのですが、見た目が・・・若い。もっとショッキングなほど老いたメイクで、観客に恐怖すら与えて欲しかったと思います。

そのため、夫婦の二人の子供、姉と弟にメインの役どころを奪われてしまった感が否めませんでした。

そう、この作品全般に言えるのは、だれ目線で鑑賞することがベストなのか不明だったことが、物語に入り込めない要因だったかも知れません。

シャラマン信者からすれば、とても厳しい評価に罵詈雑言を浴びそうですが、かく言う筆者もシャラマン監督は大好きなのです。だからこその評価と思っていただきたいと思います。

シャラマンというネームバリューの偉大さ、そして『ミスターガラス』以来の久しぶりの新作ということで、かなりの期待を持って観賞に臨んだため、いわゆる「普通の良いい作品」では物足りないのです。

確かにこの作品が他の監督であれば、もっと高評価になっていたかも知れませんが、シャラマン監督の作品としては、物足りないというのが正直な感想です。

よって、次回作に期待したいと思います。

作品の今後の扱いについて

さあ、この作品の再鑑賞はあるかと問われれば・・・・・・「ない」

決して悪い作品ではありませんが、あれあの場面って? あのシーンの、あのセリフの意味は? など、繰り返して確認するような深い意味合いはなかったからです。

ただ、本編に入る前のシャラマン監督の劇場に足を運んだ観客に向けてのメッセージがDVDやネット配信で採用されるかどうかは気になるところです。

まあ、一度観てしまえば、人生に影響を与えるほどの作品ではないということだけお伝えしておきましょう。

余談を二つ
  • 観賞中に『ミズリーブレイク』を思い出したら、映画通。
  • 一般劇場パンフレットの裏表紙には、本作とはまったく関係のない、あの有名なシリーズ映画の宣伝が掲載されていたことがサプライズ。いったいなんの作品のでしょう? ぜひパンフレットでお確かめください。

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